焼酎の湯気立ちのぼり梅の香かな
焼酎
酩酊のうつろな脳が今日も泣く
僕は自転車をこいでいた
あたりは暗闇で小雨さえ降っている
自転車は時折きしむような音をたてて
速度を緩める信号の色を傍目に交差点を通りすぎていく
大きくため息をつくとたばこに手が伸びていた
一息ついて紫煙が四畳半の小さな部屋に立ちこめると
僕はゴロンと横になった。見慣れた天井を見つめながら・・・
晴れた午後自転車は公園へ向けて転がっていく
何が待っているわけではないのにペダルが勝手に回っていく
四畳半の部屋は僕と僕の心をはきだして
静かな時間をむさぼっているのだ
そのくせ僕の帰ってこない夜はきっと
さみしがっているにちがいない
そんなことを考えながら僕は公園の階段を上り始めていた
12月のこの時期気温がさほど低いわけでもないのに
ほとんど人影がない
噴水が死んだように静かだ
ベンチが人恋しそうに小さくかしこまっている
葉の落ちた木々、色の変わった芝生
それらがみんな僕を待ってくれていたように
おちつきすましている
(春子さんは今頃どうしているのかなあ)
ふとそんなことを考えて
ああ僕もどうやら油断しているのだろう
口もきいたこともないあなたにどうして
春子さんはどうして春子さんなのだ!